注目が集まっている太陽光発電ブログ:2018年12月11日
息子の頃は土用の鰻など知らなかったが、
成長期に食べたものの中で
鰻ほどおれの印象に残るものは無い。
なかなか食べられなかったということもあるが、
それ以上におれにとって鰻といえば、
パパのお土産である。
おれが小学生の頃のこと…
パパが飲んだ帰りに、駅の近くの小さな料理屋で、
時々持ち帰りの鰻を買ってくることがあった。
22時の10:00過ぎ、
仕事終わりに日本酒を飲んで、
酔ったパパが帰ってくる。
帰って来たパパの手にはビニールの袋が下げられ、
その袋の中には包装紙に包まれた鰻重の箱が四つ、
重ねられて入っている。
小学生だったおれは、
パパの帰る頃にはもう布団の中であったから、
次の日の朝それを食べることになるわけである。
朝になると母が包装紙を開け、
ホイルの上に箱の中身をそのまま取り出し、
蒸し器で十分蒸したあと、
また同じように箱に詰める。
その上から、
小さな容器に入ったタレをかけて食べる…
息子ながらに、
これはとても美味いものだというのはわかっていた。
ひと口ひと口、大事に食べていたように思う。
箱の底は銀色をしているのだが、
おれは食べながらも、
銀色が見えてくるのが
非常に勿体無いような気がしていた。
底にボンヤリと映る自分の顔を少し残念な気持ちで、
口を動かしながら見つめていたことを覚えている。
起きてきて鰻重の箱を発見した時の嬉しさというのは、
憂鬱な朝を少しだけ幸せな気持ちにしてくれた。
その包装紙の模様もまた独特で、
よくは覚えていないが
確か白地に、緑や黒の家紋のようなものが
規則正しく描かれていたように思う。
おれはその模様をみつけると意地汚い性分で、
顔を洗うよりも先にそちらに手をかけ、
お母さんによく怒られていた。